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ふくろやタオル × 地域の“のこりもの”

タオルと“のこりもの”で
再編集した地域の魅力。

要約すると…

  1. 特産品であるはずの泉州タオルに、あまり光が当たっていなかった。
  2. 泉州の特産野菜・水なすの紫に惹かれ、規格外の野菜で泉州タオルを染色し商品化した。
  3. 魅力ある地元生産者の残り物でタオルを染めていくうちに、特産品を可視化するタオルへ。今は、生産者たちと大阪の魅力を世界へ発信する活動にまで発展している。

関空で販売されていなかった、特産品

バブル崩壊後の1990年半ば。タオル業界は安い中国製に押され、今後ますます苦戦することが予想されていました。この状況から、ふくろやタオル4代目・昇さんが廃業を覚悟した矢先、5代目・謙治さんが情報システム会社を退社。斜陽産業ともいわれていたタオルメーカーに飛び込みました。

それから約10年、謙治さんがタオル業界で働き驚いたことは、日本二大タオルの産地・泉州にあまり光が当たっていないこと。対岸の関西空港で販売されているのは、泉州タオルではなく、中国製のキャラクタータオル。一方、二大産地のひとつ愛媛県の空港では、特産品の今治タオルのお店にお客さんが絶えない光景があり、謙治さんは悔しい思いをします。

目指すは、藍染ジーンズ。

当時注目したのが、泉州の特産野菜・水なす。謙治さんは昔からジーンズの藍色が好きで、地元の水なすで深い色のタオルが作れないかとずっと考えていました。書籍やインターネットなどを頼りに、2010年頃から染色について研究をスタート。ラッキーだったのは、いとこが水なすのお漬物屋さんだったこと。その関係から農家の方に、形が悪いものを譲ってもらいひとり染色に打ち込みました。その後、納得のいく染色メーカーとめぐり合い、皮の紫色と実の黄色で染めた2色のタオル(試作品)が完成します。

同じタイミングで、プロジェクトを伴走してくれた  いとこの結婚が決まり「2人の門出を、新しいタオル(引出物)でお祝いさせてほしい」と相談。快諾してくれたおかげで結婚式という、この上なく縁起の良い日に新しいタオルのスタートを切ることができました。みずみずしい野菜と、タオルの優れた吸水性から「雫」と命名しています。(その後、この商品は2019年のG20大阪サミットで提供されました。)

地域に、同志ができる。

思い入れの強い商品を販売し、気になるイベントや勉強会に参加すると、同じ思いを持つ人とつながりやすい状況へと変わっていきました。出会ったのは、かつて生産量日本一だった泉州たまねぎの巻き返しに奮闘したり、田んぼアートやキャベツの収穫祭でまちを盛り上げる射手矢農園。土作りからバジルソース作りに励んでいるBasil.sc。岸和田の若手農家でプレミアムにんじん作りに取り組む彩誉ブランド委員会や、明治時代から大阪でぶどう栽培を続ける河内ワイン 。知恵と情熱で、地域を盛り上げようと尽力する人たちに出会い、協働がスタート。たまねぎ・キャベツ・バジル・にんじん・ワイン染めのタオルなどが誕生します。

お客さんの反応から、新しい可能性を模索。

なかでも、深い色に仕上がったのはワインタオル®️。ギフトショーに出してみると、これまで声をかけてもらっていた生活道具関連ではなく、結婚式場やホテルから引き合いがあります。謙治さんは新しい可能性を感じ、自分自身でブランディングやデザインすることを辞め、外部のデザイナー・コピーライター・マーケターとチーム組み、どこで売りたいか、どんな機能が欲しいか、どういう販売方法がいいかなどワインタオル®️のコンセプトを一から考え直していきました。たとえば、もっと深い色が出るように綿を変えたり、綿の段階から防臭にしたり。たっぷりのボリュームと吸水性があるのに、軽く乾きやすいなど高級路線のタオルへ仕上げていきました。そして、残り物から染められていることや、残り物には福があるという言葉、使う人に福が訪れてほしいという思いから、「のこり福」と名付けます。

ワイン染め(ストール)

好タイミングの発信で、生活者の心を掴む。

ワイン染めと並行して進めていたのが、ビール染め。クラフトビール店・テタール・ヴァレに飛び込み営業したところ、意気投合。大阪で醸造したビールの残り物から、染色に取り掛かります。完成したのは、2018年2月。テタール・ヴァレが、設備資金をクラウドファンディングで集めたことをヒントに、謙治さんは人生初のクラウドファンディングに挑戦します。

まずは、アウトドアが気持ちいいGW明けをゴールに、レジャーで使えるビール染めの快適タオルをリリース。58人のサポーターによってクリアします。次のワインタオル®️は、ボジョレーヌーボー解禁日をゴールに、新物のぶどうから作ったタオルをリターンに設定。結果、82人のサポーターが集まり192%達成することができました。

第3弾は1854年大阪で創業した⻄尾茗⾹園茶舗と協働し、抹茶作りの残り物でクラウドファンディングにチャレンジします。コロナウイルスの感染拡大が続くなか、やるべきか迷いながらも抹茶の染色をリサーチ。その結果、抹茶マスクは10回洗濯しても、抗菌作用が変わらないことが判明します。もともと社員用に作っていた抹茶マスクをリターンに追加し、クラウドファンディングをスタート。最終日までに259人ものファンを集め、1,021,105円(340%達成)が集まりました。

仲間たちと、大阪の魅力を海外へ。

大阪の魅力を泉州タオルに掛け合わせ、タオルを通じて大阪の魅力を可視化・発信する活動を続けたふくろやタオル。2020年からは、海を超えて大阪の魅力を伝える取り組みを始めています。のこり福をともに作った⻄尾茗⾹園茶舗、さらに純国産・⿊⽂字楊枝(大阪製ブランド認定)を作る菊⽔産業とともに⼤阪の伝統⼯芸の後継者ユニット「ZORI(ぞうり)」を結成。お茶会を楽しみながら、日本文化と⼤阪の伝統⼯芸に触れる体験型イベントを2020年1月マレーシアで開催。好評のうちに、終了することができました。(その後のイベントは、コロナウイルスの影響から中止に)

また、この10年の間に関西空港で泉州タオルが販売されるようになったり、ギフト用にしかタオルを買わなかった人が自分用に購入してくれたり、他社からアイデアが集まってくるようになったりと大きな変化があったと謙治さんはいいます。

自社の商品(特産品)にその土地の魅力を掛け合わせ、地域の人たちと大阪の魅力を発信する大きな流れを作ったふくろやタオルさんの事例は、地域を盛り上げたい多くの企業で参考になりそうです。

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