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無印良品×対馬の森のしいたけ

「対馬の森のしいたけ」隠れた名産地の挑戦

キャナルシティ博多/MUJIでの「対馬の森のしいたけ」キャンペーン

島の特産品を活かす新たな試み

韓国と日本の境界に浮かぶ、長崎県対馬。古くより大陸との交易の拠点として歴史に登場するこの島は、豊かな森(海に浮かぶ島ですが、約9割は森林に覆われています)と美しい海から四季折々の恵みがもたらされる食材の宝庫です。

とくに原木栽培の「しいたけ」の隠れた名産地。対馬の森で育ったドングリの木から養分をもらって成長する原木しいたけは、島を代表する森の恵みです。しかし、この島の基幹産業ともいえる椎茸栽培ですが、生産者の高齢化だけでなく、近年の急激な価格低迷や消費減少など様々な課題に直面しているのも現状です。

そんな中、対馬のしいたけが持つ魅力に着目し、商品だけでなく生産者の想いやこだわりまで消費者に届けてくれる企業との出合いをきっかけに「対馬の森のしいたけ」という新たな商品ラインナップが生まれました。

これまで市場出荷が中心だった地元農協が挑戦する、Found MUJIと対馬の森のしいたけの新たな取組みをご紹介します。

オリジナルのパッケージと段ボール

海と森の入り組む対馬の風景

対馬の森のしいたけ

原木栽培の「ホダ場」の様子

原木の養分をうけて成長するしいたけ

Found MUJIの取組み。事業を通じて地域と向かい合う

株式会社良品計画。衣料品や家庭用品から食品まで日常生活全般にわたる商品群に関して、企画開発、製造、流通、販売までを行う製造小売業であり、今では世界中の人に知られる「無印良品」を展開する企業です。「無印良品」の誕生からおよそ30年にわたって生活美学の専門店として歴史を刻んできました。

1980年に株式会社西友のプライベートブランドとして40品目でデビューした「無印良品」は、現在では7,000品目超を展開するブランドへと成長。

そんな大きな飛躍を見せる無印良品では、商品企画にあたって、ものをつくるというよりも「探す、見つけ出す」という姿勢で生活を見つめることを大切にする文化があるといいます。

「永く、すたれることなく活かされてきた各地の日用品や食品を、世界中から探し出し、それを現代の生活や文化、習慣の変化にあわせて少しだけ改良し、適正な価格で消費者まで届ける。」

継続的に取り組まれてきたこの活動は、2003年に「Found MUJI (見出されたMUJI)」と名付けられ、さらに世界の細部にまで入り込みながらよいものを探す旅が始まりました。

見出されたものたちの中には、そのままの品質ではわたしたちの生活に入りにくいものもあります。それらを今の生活の品質基準に合わせて、生産者と対話しながら改良し、無印良品のものとして仕立て直します。

よいものを探す目を磨き、そのもののエッセンスを残しつつ、それらを現代の生活に合わせてさらによくしていく。Found MUJIは、無印良品と生産者が一緒になって行う活動として国内外で広がりをみせています。

無印良品が「われ」しいたけに寄せる想い

良品計画の社内では、今でも無印良品の商品開発理念を象徴していると語り継がれる企画があるとのこと。それが「こうしん われ椎茸」。1980年、ブランドの立ち上がり当初に発売された商品です。

乾燥しいたけは、生のものに比べて旨みや香りが強く栄養価が高いだけでなく、戻し汁は風味豊かなだしにもなります。

味にも栄養にもすぐれ、家庭料理の基本を支える食材ですが、発売当時も日常使いする人が減っている状況にあったといいます。

消費者離れがおきた理由のひとつには「価格」の問題もありました。当時も今でも「乾しいたけは高い」というのが常識。その常識を乗り越えて多くの消費者に受け入れられたのが、無印良品の「こうしん われ椎茸」でした。

手頃な値段で消費者の手元に届けることができた秘密は、形や見映えにとらわれず、不揃いのものや割れたものも一緒に販売したこと。今でこそ不揃いや規格外を目にする機会は増えましたが当時は大きな挑戦だったといいます。

「大きさはいろいろ、割れもありますが、風味は変わりません」パッケージに印刷された「安さのわけ」には、「生活の基本となる本当に必要なものを、本当に必要なカタチでつくる」という、開発チームの想いが込められていました。

そして、この想いは30年経った今も、変わらず無印良品の開発チームの中に受け継がれています。今回の対馬での取組も「産地も消費者も納得できる適正な価格で、価値あるものをお届けしたい。」そんなMUJIと産地の気持ちが込められています。

生産者を尋ねてヒアリング

生産現場へも実際に足を運ぶ

素材のエッセンスを活かして、今の生活に合うカタチに

しかし、30年前と大きく違うのが生活者のライフスタイル。以前であれば、乾物が台所で活躍するシーンも少なくはなかったと思います。しかし、近年は乾物をつかって料理をする人が減っている、あるいは若者からは「使い方が分からない」といった声もちらほら。

今回の取組では価格だけでなく、どうしたらMUJIを訪れる方に手に取ってみたいと感じていただけるか。あるいは、生活の中に乾物がある場面を想像してもらえるか。そんなことも考えながら商品を設計する必要がありました。

そこで対馬農協は、使い勝手の良い容量と価格の再検討、新たなパッケージの導入にも挑戦。さらに、売場を持つ良品計画との連携だからこそ、戻し方や使い方といった情報の発信、無印良品の保存容器とタイアップした展示など、生活シーンのなかで乾しいたけが活躍する場面を想像してもらいやすい仕掛けの検討も重ねています。

新たなパッケージ「対馬の森のしいたけ」シリーズ

新たなパッケージ「対馬の森のしいたけ」シリーズ

新たなパッケージ「対馬の森のしいたけ」シリーズ

新たな展開:しいたけを活用した新商品開発へ

対馬農協にとってのFound MUJIというパートナー

離島地域の生産者や農協にとってはこれまで市場への出荷が主流でした。対馬も例外ではなく、丹精こめて育てたしいたけであっても、一度出荷してしまうと、その先の消費者の様子を知る機会は多くありません。

市場の価格変動、消費量といったことから動向を知ることはできても、都市部の生活者のライフスタイルの変化や好みを直接感じ取る機会が少ないのもこれまで当然のことでした。

「よい素材があることは分かっていても市場価格が低いから仕方がない」、「商材を誰にどんなカタチで届けたら良いのか分からない」そんな課題を抱えている地域にとって、FoundMUJIのように売場の向こう側にいる生活者を具体的に想像しながら取り組める挑戦は大きなチャンスといえそうです。

関わる人々の意識を刺激し、適正な価値を認めることで産地が成長する機会となるだけでなく、新たな商品は生活者の暮らしをより豊かにし、企業にとっても魅力的な商材を育てることにつながる。昔からの言葉でいえば「三方良し」。そんな関係に一歩近づく取組といえるのではないでしょうか。

地域の強みを活かしながら、企業とともに「今の時代を生きる生活者の暮らしに入っていくためのストーリーと必要なカタチをつくる。」そんな挑戦が国境の島で続いています。

原木栽培の「ホダ場」の様子

対馬を代表する生産者、永尾賢一さん

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