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日本橋三越×多摩川の鮎

環境保護の視点で多摩川の天然鮎を商品化

イベントで振る舞われる鮎の塩焼き

鮎からみえる多摩川の環境

都会の川は汚い―ましてや東京、多摩川なんて、というイメージは今は昔。流域に住む人の努力と、研究を重ね科学力を結集した下水道の整備で、今や多摩川は「ふるさとの川」と呼ぶにふさわしい、清らかな流れをたたえています。 しかし、その水の内実をみれば、山から流れてくる水や湧き水は3割にも満たず、下水処理水が7割強という現実。だからこそ、この多摩川をふるさととして生きるためにと立ち上がった人がいます。それがかねてから多摩川の環境保護活動をしていた山崎充哲さん。「ふるさとの魚」といわれる鮎を獲り、売り、多くの人に食べてもらうことで、多摩川に向き合う道を拓いています。

多摩川に生息する生物を知ってもらおうと、移動水族館を開催することも

子どもに川の大切さを伝える、川の生き物調査

鮎は、加工してこあゆせんべいと一夜干しに。イベント時にふるまう他、地元のそば屋の天ぷら、日本橋三越では季節限定のプレミアム品として販売されています。
三越といえば誰もが知る一流百貨店。なぜ、多摩川の鮎を扱おうと考えたのでしょうか。「三越のお客さまは、山菜、芋、雑穀など古くから重宝されてきた素材に高い関心を示されます。鮎はまさに日本人の心まで癒してくれる川魚。環境保護活動の素晴らしい取組みを含めて、共感を覚えたのが取り扱いに至るきっかけです。」と日本橋三越本店生鮮担当の酒井さんはいいます。

人が躊躇なく入れるほどに川はきれいになったが、課題はたくさん

飼っていた魚を川に放さないために「おさかなポスト」を設置

小中学校での授業も数多くこなす山崎さん。鮎を通して多摩川の環境を伝える

投縄漁体験を通して漁師の仕事を知ってもらう

漁師の生業がある川にしていく

三越のお眼鏡にかなう鮎と聞くと、その味にも興味がわいてきます。実際、多摩川の鮎はおいしく、そこには多摩川ならではの少し皮肉な事情も影響しています。下水処理した水がたくさん流れ込む多摩川には、必然的に植物の肥料となる窒素やリン酸も含まれます。すると鮎の餌である水苔がよく育ち、連鎖して鮎もよく育つというわけです。

「鮎は美しい川のシンボルじゃなくて、もはや多摩川の資源。鮎をどんどん食べることは、有機物が川に増え過ぎるのを防ぐし、今後のために必要なことなんだよ」と山崎さん。たくさんの人に魚を提供できる漁師になった理由のひとつには、そんな想いがありました。

漁師になったもうひとつの理由について、「川を汚す人に対して、俺の稼ぎをどうしてくれるって堂々といえる、多摩川のうるさい親父になってやろうと思って」と山崎さんは笑います。例え保護活動をしていても、権限がなければ疎ましがられてしまう状況で、権利者としてモノをいい、川を良くしていこうと具体策を講じたのが10年ほど前。漁業権を持つ漁師になるしかない、と山崎さんは漁業組合に入りました。

もともと魚釣りが得意で、魚の生態を熟知していた山崎さんが、鮎漁をするのは、年間で十数日、しかも1日に2時間ほど。それでも投網漁で、多ければ1日に50kgほどの鮎が獲れます。これだけで生計を立てるわけにはいかなくても夏のシーズン中、魚を見る目さえあれば、漁師の仕事も成立すると山崎さんは考えています。

多摩川を上る鮎

鮎も東京で地産地消を

東京の野菜は目にすることがあっても、東京の魚、しかも川魚を地産地消している人は、ほとんどいないのではないでしょうか。しかし、多摩川にも、鮎、あさり、うなぎなど旬の味覚が意外とたくさんいるのです。その中でもなぜ鮎なのか。決め手の理由を、山崎さんは語ってくれました。

「鮎は日本のどこの川にもいる、いわばみんなにとってのふるさとの魚なんです。どこの地域の人に聞いても地元の鮎が一番って答えるんじゃないかな。僕だって多摩川の鮎が日本一だと思っているから、売っているところもそりゃあ日本一がいいよね」。 鮎の大きさを揃える大変さ、山崎さん以外に漁をする人がいないための品不足など、まだまだ安定的な販売に向けては課題もありますが、三越が認めた“東京の旬の味”は、今後さらに注目を浴びていくでしょう。そのためにもまずは、鮎を獲ること、かつては当たり前だった多摩川での生業としての漁業を継いでいくことが大事です。

山崎さんはいいます。「必要なのは、川から地域を元気にする、“川おこし”。多摩川で鮎を捕ることは一次産業の一歩手前、環境整備から始めなくちゃいけないし、獲った後は加工して売り方まだ考えなくちゃいけない。大変だけど、おらが川の魚、鮎を通してもっと多摩川をいい川にしていけるはず」と。 山崎さんがこだわった“一流の売り場”三越で、東京の旬を伝える鮎の商品。買うのは、旬を尊び、食材の背景に感度の高いお客さんです。そこには、かつて環境保全活動ではあまり接点がなかった人たちも大勢います。鮎を通して川の環境にも興味を持ってもらうことで、多摩川のサポーターは新しい層の人たちにも、着実に広がっています。清濁飲み込んできた多摩川が育んだ鮎が、川と共にある暮らしに今一度想いを馳せるきっかけを、与えてくれているのです。

※多摩川の天然鮎の 一夜干しは、鮎の取れる時期だけの販売となります。
お問い合わせは、 日本橋三越本店 本館地下1階鮮魚コーナー 03-3241-3311(大代表)まで。

日本橋三越本店でも販売される半干しの鮎はそのまま焼くのもいいが、天ぷらがおすすめ

「こあゆせんべい」はオーブントースターで軽くあぶると美味

山崎さんの事務所の天井には、実物大という外来種の魚の写真が貼ってある

日本橋三越本店の継続的な支援に感謝する山崎充哲さん

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