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サンスター×津軽の藍

とだえていた地場産業の
復活にも貢献した新製品の開発

江戸時代から残る「こぎん刺し」は、津軽地方の伝統的な藍染め品。

津軽の藍の有用性に着目したサンスターのスキンケア製品。

2013年春サンスターは、藍の肌への有用な働きに着目したスキンケアブランド「Qiana(キアナ)」から、石けん、ローション、クリームの3品を発売しました。素肌美を活かし、肌本来の美しさを引き出すこの製品には、江戸時代より伝承されてきた染色素材「藍」から作られたエキスが活用されています。使用されている藍は、津軽地方で栽培されているもの。かつてこの地を代表する農産物だったタデ藍と藍染め産業復活への期待が込められています。

津軽には古くから藍染めの文化がありました。農民が紅や朱といった色を着物に用いることが禁じられていた江戸時代、衣装を藍で染めることは、農民である証として必然的に生まれた慣習でした。「こぎん刺し」に代表される津軽の伝統的な衣類も、そんな時代に生まれ、その後藍染めは産業として発展してきました。明治時代になってからも藍の産業は好調で、原料であるタデ藍の栽培も盛んに行われてきましたが、明治末期になると情勢が一転します。藍色色素であるインディゴが化学的に合成できるようになったことで、たちまち津軽にもその影響が波及。藍の栽培も藍染め工場も大きな打撃を受け、その後一世紀もの間、藍の産業は津軽から姿を消してしまうことになります。

津軽のシンボル岩木山を望むタデ藍畑。この美しい自然の中で藍文化も生まれた。

弘前大学での藍の成分研究にサンスターが参画。

津軽の人は、経験的に藍という染料に何らかの素晴らしい効用があることを知っていました。藍染めしていない衣類と比べて虫を寄せ付けず、カビが生えにくい、藍染め職人さんの手がきれいなど、民間に伝わってきた藍の効用。これを科学的に解明するために研究をスタートさせたのが、弘前大学の北原晴男教授でした。藍にはトリプタンスリンという成分が含まれていること。その成分は肌に対して有用性があることなど、藍のメカニズムが次第に分ってきました。そして、この研究成果に着目したのがサンスターでした。藍から抽出されるエキスを使って、新しい効用のある粧品がつくれないか。サンスター株式会社 新規素材活用事業開発プロジェクトは、そんな思いから弘前大学との共同研究に乗り出したのです。エキスやその抽出方法は分っていても、それをプロダクトとしてラインに乗せるには、いくつかの問題がありました。藍エキスを安定的に大量に抽出する技術はサンスターの技術開発力が活かせる場。ここは時間をかけてプロセスを検証しクリアすることができましたが、肝心の原材料であるタデ藍の供給体制をどう作っていくか。高いハードルが待っていました。

タデ藍の有用成分の抽出に成功した、弘前大学の北原晴男教授(右)。

藍染めの原料となるタデ藍。葉を傷つけると、切り口が藍色に変わる。

藍の産業の復活を願う青森市がプロジェクトに協力。

タデ藍は、研究開発用に大学内の農地で栽培していましたが、製品化に際しては安定供給のできる農地が必要です。しかしながら当時、青森でタデ藍を栽培している農家はほとんどありません。弘前大学との共同研究がはじまった2008年から4年間、藍エキスの製品化のために弘前市に赴任されていたサンスター主任研究員の後藤昌史さんはいいます。「地元で藍を栽培している農家さんを探してみましたが一軒も見つかりませんでした。そこで、青森市に相談することに。すると、休耕地の利用にも役立ち、何より藍の産業の復活への第一歩にもなると、積極的に農事組合をご紹介いただきました。栽培実験をしていた弘前市と実際に栽培をすることになった青森市とでは土壌が違っていたため、生育条件の検討などに少し時間がかかりましたが、今では順調に栽培が行われています。青森市の協力は、プロジェクト推進の大きな原動力になったと思います」。津軽の藍をまん中に、青森市とサンスターはお互いのメリットやビジョンを共有したのです。

独自の方法によって、乾燥される藍の葉。これがエキスの原料になる。

肌に対して有用性のある藍のエキス、この抽出法でサンスターは特許を出願。

他社と差別化において、地域資源に目を向けることは重要。

Qianaは通信販売だけでスタートしましたが、青森県下では既に店舗販売も始まっています。今回のプロジェクトリーダー山本和司さんはいいます。「この製品を、この先たくさんの方に使ってもらえるよう努めること、また藍エキスを使った新たな製品開発に取り組んで行くことが私たちの使命ですが、それによってタデ藍の栽培がさらに盛んになる。一世紀のブランクを経て藍の産業が復活する。津軽の活性化につながっていく。それは素晴らしいこと。こういう貢献が大切なんです。実際に私も青森、弘前とのかかわりを通して、メーカーが地方大学と組む意味がここにあることを実感しました。」

サンスターではこの他にも、地方の大学や地域と連携し、同様に商品開発に取り組んでいます。金沢大学とハトムギ、宮城県一迫地区ではへちま水といった製品です。山本さんは、続けます。「まだまだ主流ではありませんが、このような取り組みは、実際に成果もあがっています。

ますます競争が激しい時代に、製品やブランドを差別化し、企業の独自性につなげていくことの大切さ。そのために、企業が地方大学と組んだり、地域資源に目を向けるたりすることは、大いに意味のあるとだ思いますよ」。

サンスターQianaから発売中の石けん、ローション、クリームの3品。

藍のプロジェクトを支えてきたサンスターの山本和司さん(左)と後藤昌史さん(右)。

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