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まくら株式会社 × 落花生の殻

独自の視点で
ゴミを資源に。

まくら株式会社の河元社長。手元には落花生まくら、後ろの棚には自社で取り扱う枕が並ぶ。

ゴミから生まれた落花生まくら

枕を中心とした寝具類のインターネット通販・企画製造などを行う、まくら株式会社(社長:河元智行、本社:千葉県柏市)は、千葉県の名産品である落花生の殻を使った、落花生まくらを企画開発し、販売している。元々、落花生の殻は産業廃棄物と処理されていた、いわゆるゴミである。このゴミを使い、独自の視点で魅力的な枕を生み出したその背景には何があるのか、まくら株式会社河本社長にお話を伺いました。


落花生の殻を再利用した新発想の枕

落花生まくら開発のきっかけは、まくら株式会社の商品企画担当が新しい枕の企画を考えていたときにたまたま見つけた、落花生の殻の消臭効果についての新聞記事でした。この記事の引用もととなった論文によると、備長炭よりも落花生の殻の方が消臭効果があったと報告されていました。

「枕は頭皮の臭い、汗、涎などですごく臭くなることから、落花生の消臭機能に目をつけました。消臭機能があるので枕の素材に丁度いいなと思ったんです。しかも、千葉県は落花生の生産量日本一(全国生産量の7割を占める)。千葉県内に枕製造工場と商品出荷用の倉庫がある弊社であれば、コストも抑えられる。そこから商品化へと動きはじめました。

落花生の殻を入手するために千葉県産業振興センターにいき、千葉県内の落花生農家を紹介していただきました。落花生は殻付きで市場にでるものと、殻をとり加工されて市場にでるものがあります。落花生農家にいくと、加工途中ででた落花生の殻は産業廃棄物として捨てられていました。

交渉の末、買い取りさせていただく形で落花生の殻を千葉県内の落花生農家から調達できることになり、落花生まくらを商品化できました。

正直、最初はそんなに売れるとは思っていなかったのですが、TV・新聞などのメディアで紹介されたことで、在庫が足りなくなるぐらい売れています。

落花生農家には、今まで捨てていたものに使い道がでてきて、すごく喜んでもらってます。

ただ、いいことばかりではありませんでした。落花生まくらを開発して知ったのですが、落花生農家は減り続け、落花生業界は右肩下がりの酷い状況でした。国産の落花生に比べて価格が1/8と破格の中国産の落花生におされ、国産の落花生の買い取り単価が20年前に比べて30%位さがってしまったことが原因でした。
弊社で、落花生の殻を買わせていただいてますが、右肩下がりの落花生業界をV字回復させる程のパワーはないんです。でも、若干は貢献できているのかなと思います。今後、落花生まくらが有名になることで、衛生品としての落花生の殻の需要が広がり、落花生農家が夢とか希望とかを描けるような新しいビジネスにつがればいいなと願ってます。弊社としても、結果として地元に貢献できたらいいなと思います。

この落花生まくらを開発したのは、弊社が世界初です。落花生の殻を見て、じゃあ枕の素材にしようとはなかなか考えない。そこを、枕×落花生の殻と結び付けられるところが弊社にしかできない発想だと思っています。」と河本社長は話します。

落花生まくらの素材となる落花生の殻。

枕の素材として優れた機能がある「落花生の殻」を使用した、落花生まくら。

千葉県八街市にある落花生畑。落花生まくらは、主に八街産の落花生の殻を使用。

落花生。これから、加工・洗浄をし、落花生まくらの素材となる。

ご当地枕で全国各地の地域資源発掘を目指す

「落花生まくらを昨年発売し、それが好評だったので、落花生以外の千葉県の名産品・特産品を使った、ご当地枕シリーズの開発に取り組んでいます。
落花生まくらに続くご当地枕第二弾として開発したのが、チーバくんの安眠まくらです。千葉県のマスコットキャラクター・チーバくんの形をした枕で、すごく人気があります。千葉県の形には安眠に適した理由がありまして、九十九里浜が肩のラインにぴったりフィットするんです。

第三弾は、千葉県・九十九里浜の海水を使い、揚げ浜製法で作っている天然の塩を使った九十九里浜の塩まくら。塩まくらは、今、若干ブームなんです。ちょっとひんやりする感じが人気です。

第四弾は、千葉県の杉を使った枕、ピロー・オブ・セドロール。杉に中にセドロールという物質が入っています。セドロールには森林浴と同じようなリラックス効果や、鎮静効果があると言われており、安眠効果のある枕です。

現在、この4つ(落花生まくら、チーバくんの安眠まくら、九十九里浜の塩まくら、ピロー・オブ・セドロール)を千葉県のご当地枕シリーズとして展開しています。

このご当地枕シリーズですが、千葉県以外にも広がりはじめています。
次回は、秋田県の枕をリリース予定です。秋田杉の枕と、まだ出来るかどうか分かりませんが、あきたこまちの米ぬかを使った秋田美人の枕を開発中です。秋田県以外にも、滋賀県から要望がきていたり、枕の素材として桃を提案してくださっている地方自治体もあります。桃のエキスがとても肌にいいので、桃のエキスを枕カバーにいれるのはどうだろうと検討中です。

ご当地枕を通じて、地域の資源を発掘して、世の中に広げていこうという取り組みをこれからどんどん進めていく予定です。

実は最近、枕の素材の提案を地方自治体をはじめとした、ご当地の方からされる機会が増えてきてるんです。例えば、秋田県の場合は、秋田県からいろいろと打診をいただき、開発がスタートしました。

地元ならではのご当地枕を開発して、ふるさと納税や補助金などの制度に絡めていきたいという考えが地方自治体にはあるようです。

ただ、折角作ったご当地枕も出来上がったら終わりみたいなところも多いのが現状です。販路がないので売りたくても売れないんです。

そういったご当地枕を、ご当地枕シリーズのサイトで紹介して販路を確保していきたいと考えています。 いずれは、ゆるキャラ®グランプリではないですけど、Pillow—1グランプリ、P−1グランプリみたいなものを、全国のご当地枕でやっていきたいですね。いろんな地域にまだまだ眠っている資源があるので、眠らせておくのはもったいないと思っています。」と河本社長は話します。

三大欲求のひとつである睡眠欲を、人の一番近くで支え続ける枕は10年後も100年後も無くならないし、枕の存在感はさらに増していくだろうと力強く話す河本社長。枕が切り開く人類の未来は、今日もまくら株式会社から生まれている。枕という切り口での地域資源発掘は、その序章に過ぎない。

千葉県ご当地枕シリーズ第二弾、九十九里浜の塩まくら 。

千葉県ご当地枕シリーズ第四弾、ピロー・オブ・セドロール。

千葉県ご当地枕シリーズ第三弾、チーバくんの安眠まくら。

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